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きいたんとルー きいたんのお洋服。

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きいたんとルー きいたんのお洋服。



昔々、あるところに、
きいたんというたべこが住んでいました。
たべこというのはちいさいひとのことです。
ちみことも呼ばれます。
食べて、寝て、にこにこして、
みんなに大事にしてもらうのがお仕事です。
きいたんもお兄ちゃんやお姉ちゃんに、
お世話をしてもらい、毎日幸せに暮らしていました。

きいたんはまだ小さくて、
毛がぱやぱやとしか生えていないのですが、
お利口さんですから、自分でお洋服が選べます。
ちゃんと自分のタンスを持っていて、
毎朝、吊されたお洋服の中から、好きな服を選ぶのです。
お姉ちゃん達がきいたんに可愛い格好をさせたくて、
いろいろ買ってくれますので、
きいたんはたくさんのお洋服を持っていましたが、
中でもお気に入りのシャツが三枚ありました。
黄色いクマちゃんと、青のネコさんのシャツと、
灰色の生地に赤や緑、黄色の水玉模様のです。

クマちゃんとネコさんのには「HUG ME!」
つまり、「抱きしめて!」と書いてあります。
きいたんは、ぎゅっと抱っこして、
大好き大好きしてもらうのが何より好きでしたから、
自分にぴったりのお洋服だと思っていました。
灰色のには特に何も書いてませんでしたが、
代わりにフードと、
”だあすべいだ”と言う名前が付いておりました。
名前の由来はきいたんが知っていますが、
誰が聞いても理解できなかったので、よくわかりません。

それでもきいたんはご機嫌です。
「くまちゃん、ねこちゃん、だあすべいだ。
 くまちゃん、ねこちゃん、だあすべいだ。」
毎朝歌いながら、お気に入りの三枚を、
順繰りに引っ張りだして着ていました。
余りに同じ服ばかり着ていますので、
よく、お姉ちゃんに「偶には違うのを着たら?」と、
言われるのですが、
全くそんな気なぞ、ございませんでした。
おかげで三枚のお洋服は、
毎日のように洗濯して乾いては着て、
洗濯して乾いてはと繰り返し着てもらえる反面、
他のお洋服はぜんぜん着てもらえず、
タンスの中でお留守番ばかりの日が続きました。

あまりにも、きいたんが別のお洋服を着ませんので、
ついにお洋服達は怒り出しました
「クマとネコ達ばっかり、ずるい!
 自分達ばっかり、着てもらってずるい!」
何枚ものお洋服が口々に不満の声をあげれば、
三枚のお気に入り達も大きな声で反論しました。
「そんなの、どうにもなんない!」
「私たちだって、休みたい!
 毎日のように洗濯されて、早く痛んじゃう!」
実際、何度も洗濯されたおかげで、
お気に入りほど毛玉ができていました。
沢山着てもらえるのは嬉しくても、
ボロになるのは嫌なので、
お洋服達は順繰りに着てほしいと思っていたのですが、
結局、選ぶのはきいたんですから、
いくら喧嘩をしても、どうにもならないのです。
お洋服達は皆、悲しくなって大きな声で泣きました。

余りに大きな声で泣きましたので、
お父さんが気が付いて、やってきました。
「煩いな、何の騒ぎだ?」
早速、お洋服達はお父さんに訴えました。
「きいたんが、同じ服しか着てくれない!」
「僕たちだって、着てもらいたい!」
お父さんには、お洋服達が言いたいことが、
よくわかりました。
お洋服として生まれたからには、
着てもらいたいに決まっているのです。
けれども、お父さんは困った顔をして言いました。
「でも、きいこは言っても聞かないしな。」
そうなのです。
お姉ちゃんも、お兄ちゃんも、
きいたんが毎日同じ服ばかり着ているので、
別のを着るよう、注意するのですが、
きいたんはぜんぜん気にしないのです。
一体、どうしたらいいでしょうか?

きいたんが選んでくれないのなら、
他の人が選べばいいのです。
「お父さんが選んで!」
「お父さんが毎朝、着るお洋服を選んで!」
お洋服達は口々にお願いしましたが、
お父さんは首を横に振りました。
「そんなこと言ったって、
 今でさえ、きいこはパジャマの準備もしないんだぞ。
 朝の服選びまで俺がやったら、
 あいつ、何にもしなくなっちゃうじゃないか。」
「でも、このままじゃ、
 ちょうど良い季節が終わっちゃう!」
「来年になったら、きいたんが大きくなって、
 僕らを着られなくなっちゃう!」
どの子も着てもらえないまま、
いらないお洋服になるのは絶対に嫌でした。
けれでもこのままでは、ずっと着てもらえないまま、
小さかったり、季節があわなくなったりして、
捨てられてしまうに違いありません。
お気に入りの三枚だって、
ボロボロになってしまいます。
まだまだ丈が足りるのに、
捨てられるのなんかお断りでした。
半べそで訴えるお洋服達に向かって、
お父さんは大きい声で言いました。
「そんだったら、三枚は有休を取れ! 俺が許可する!
 お気に入りがなければ、きいこも別のを着るだろ!」

有休というのは、有給休暇、
即ち、働いている人が会社の許可を取って、
定期のお休み以外で正式に休むことです。
お洋服には定時の休みも、労働管理局もありませんので、
皆は目を丸くしました。
けれども、お父さんが言うことですから、
それに従ってみることにし、早速、
三枚はきいたんのタンスから抜け出しました。

お気に入りがいなくなったことに、
しばらく、きいたんは気が付きませんでした。
お洗濯されていたり、乾いていなかったりで、
タンスにないことは変ではなかったからです。
けれども、1週間ほどすると、
流石におかしいと気がついて、
きいたんは、お姉ちゃんに聞きました。
「きいたんの、ねこちゃん、ない。
 どこいっちゃったの?」
「知らないよ。 そういえば、
 最近お洗濯にでてこないねえ?」
お姉ちゃんが知らなければ、誰が知っているでしょうか?
誰も知るはずないのです。
お兄ちゃんも、仲良しのルーも首を横に振りました。
きいたんは明日になったら戻ってくるかもしれないと、
その日はお布団に入りましたが、
次の日の朝になってもお洋服は、
やっぱり戻ってきていませんでした。

困ったきいたんは、
まだ、寝ていたお父さんをたたき起こして聞きました。
「おとうたん、おとうたん。
 きいたんのねこちゃんと、
 くまちゃんのおようふくがない。」
「あいつ等は、有給休暇を取りました。」
あっさり答えはでてきましたが、
きいたんは有給休暇を知りません。
「ゆうきゅうきゅうかって、なんだ?」
「有り体に言えば、お休みです。」
お父さんの説明を聞いて、
お洋服がお休みしてしまったことに、
きいたんは驚きました。

「なんで、おやすみとっちゃったの!?」
「お前が毎日、同じのばかりきてるからだ。」
お父さんは、さも、当たり前のようにいいましたが、
そんなのってありません。
「なんで、いなくなっちゃうの!」
「だから、有休を取ったからだ。」
「なんで! なんで!」
きいたんはぷんぷん怒りました。
有休だか、なんだか知りませんが、
きいたんに黙っていなくなっちゃうなんて、
酷いじゃありませんか。
けれども、お父さんも怒り出しました。
「うるさし! 元はといえば、
 いくら注意されても、
 お前が言うことを聞かないからだろう!
 ストライキは労働者の権利だ!
 悪質な雇用環境は是正されるべきだ!
 ブラック企業を撲滅せよ!」
「そういうこと、いわないで!」

全く、酷いお父さんです。
きいたんを捕まえてブラック企業とは何事でしょうか。
きいたんはただ、
お気に入りのお洋服が着たかっただけです。
けれでも、同じお洋服ばかり着ていてはいけないのは、
やっぱり変わりませんでした。
「だったら、ちゃんと順番に着ろよ。
 早く痛んだり、着て貰えなかったら、
 洋服だって嫌に決まってるだろ。
 他人が嫌がることをするんじゃない。」
お父さんに叱られて、きいたんはしょんぼり、
肩を落としました。
「きいたんの、だあすべいだ、もどってこないの?」
「そのうち戻ってくるだろ。
 てか、なんであれ、
 だあすべいだなんて名前なんだ?」
「おぼうしかぶると、だあすべいだみたいだから!」
「やばい、娘の言ってることが、
 分かるけど理解できない。」
相変わらずいい加減な対応のお父さんに、
きいたんは諦めてしょぼしょぼとタンスに向かいました。
けれども、やっぱり、きいたんが着たいのは、
お気に入りの三枚なのです。
「きいたんのお洋服、ない!」
きいたんは、お着替えを待ってるルーをだっこして、
もう一度ため息をつきました。
「きいたん、やっぱり、クマちゃんが好きだよー」
「でも、違うのもちゃんと着ないとだめだよ!」
聞き分けのないきいたんに、ルーが注意します。
けれども、そんなルーは毎日お着替えなんかしません。
いつでも同じ毛皮です。

「ルーは、いつもおんなじで、いいねえ。」
羨ましくなったきいたんに、
ルーは胸を張って言いました。
「ボクの毛皮はふかふかだからね!
 自慢の一張羅さ!」
「きいたんのくまちゃんだって、
 じまんのいっちょうらだよ。」
すると、黙って話を聞いていたパジャマが言いました。
「じゃあ、きいたんも、
 一日中、ボクを着てるといいよ。
 着たいお洋服がないんじゃ、仕方がないもんね。」

一日中、パジャマで寝てばかりいるのは、
小さい赤ちゃんだけです。
きいたんは、ちいさいたべこさんですが、
赤ちゃんではありません。
お姉ちゃんなんです。
それなのにルーが騒ぎ始めました。
「きいたん、きいたん、まだパジャマ!
 一日パジャマは赤ちゃん、赤ちゃん!」
大慌てできいたんはお洋服を選び、
ちょうど良さそうなシャツを引っ張り出しました。
「きいたん、今日は、これを着るよ。」
「青いお洋服、かわいい、かわいい!」
ルーに誉められて、きいたんは気をよくしました。
そもそも、きいたんのお洋服はみんな可愛いのです。
タンスの中のお洋服を眺めて、
きいたんはむふーと息を吐きました。
「きいたん、これからはちゃんと違うのも着るよ。」

こうして、きいたんは毎日ちゃんと、
違う服を着るようになりました。
どのお洋服もちゃんと着てもらるようになったので、
暫くして安心したお気に入りの3枚も戻ってきました。
そんなわけで、皆幸せに暮らしましたとさ。

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